初めての転職時、身についていないキャリアに愕然!

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昔から就職して3年後、3割が会社を辞めるというのはご存知とおり。ところが最近は入社して1ヶ月、3ヶ月で退職する新人を含めて3年後、半数近くが最初の会社を退職しているという。石の上にも3年という言葉は、もはや現代の若者にとって死語となる。ところが最近の若者の転職事情は以前と違って前向きなキャリアチェンジとなっているようだ。しかし次へのステップを目指すところで思わぬ弊害もある。今回はそんな見切りをつけて次を目指す若者ちの転職事情を追ってみる。

3年間の勤務を経て地元へ帰る決意で退職。


「こんなことだったら資格や経験が身に付く仕事を選べば良かった」今年7年間勤めた会社を退職して、転職することを決意した中川さん(30歳)。彼は某大学を卒業して東京の中堅食品メーカに就職。将来のことを考えて地元に帰る事を決め故郷への異動を申請するが今の会社では欠員の予定がなく当面は彼の希望は叶いそうにない。勤めながらの転職活動は難しいだろうということで退職届を提出して次の新天地を目指すことにする。中川さんの3年間の評価は悪くなく、むしろ上司から引き止められたくらいだから次の新天地も楽に決まるだろうと考えていた。

求める条件・資格を見て愕然

今まで経験してこなかった人事管理系の仕事にチャレンジしてみたいという思いがあり、人事や管理系の仕事をピックアップして転職エージェントの登録した。自らも直接サイトの求人に応募しようと活動を開始始めた。ところが就きたい会社の資格、条件等を見て戸惑う。かねてから関心のあった地元プロスポーツチームの総務人事の資格条件を見てみると,,
【応募に関する資格・条件】
・人事関連業務の実務経験5年以上
・キャリア・新卒採用の実務経験
・人事制度の企画・運用経
・労務、給与社保
・福利厚生に関連する実務経験
・HRM導入・実務経験。
と記されている。営業で7年間、現場一筋で働いてきた経験がこの仕事では活かせない。他の総務人事系も見たが、どこも同じような資格、条件を求めている。ただエージェントの担当のアドバイスに救いを受ける。資格、条件もありますが、人事の仕事の場合、採用はコミュニケーション力を必要とします。中川さんの場合は7年間の営業の仕事で対人折衝で鍛えられているでしょうし、大手にいらっしゃたので社会人としての基礎も十分だと思います。そこを踏まえてキャリアシートを訂正して推薦してみましょう。救いの手があった。一筋の光明がさし、エージェントに託すことに。

新たな難関

数日後エージェントより連絡があり、こう切り出された。
「中川さんExcel、PowerPointは使えますか?」
「使ったことはありますが、初心者に毛が生えた程度の経験で」
「関数は」
「できません」
「そうですか」それだと厳しいかもしれないですね。総務人事といっても面接だけやるわけではないので、報告書や統計データを提出したり色々な業務があります。パソコンスキルは必須です。前の職場でもそうではなかったですか」
確かに岩言われてみればそうで、前職では若いスタッフはパソコンを使いこなしていた。そう年は変わらないが、自分たちの時代は報告書類を提出すれば事務スタッフが入力してデータを仕上げてくれていた。上司からは、いつ何があってもいいように営業だけでなく、英会話や、ITの基本的なところは勉強しておけよと指導を受けていた。仕事の忙しさを理由に聞き流していた。そこにかまけて基本業務を疎かにしていた事を今となって後悔することに。

職業選択の意識の違い

ここで日米の就活における職業意識について調べてみよう
欧米の学生の職業意識は高い。そのため学生たちは大学在学中にインターンシップやアルバイトなどを通じて、実社会に出て働くことを想定した仕事経験をしていく。その過程で自分の適性や興味を探っていく。
職業選択の自由度が高いため、ある程度の年齢になると自分の興味や能力に合った職業を選ぶことを考え始める。大学入学前には将来の職業について考え始めている。
大学進学後も、興味のある職業に必要な知識やスキルを身につけるために、意欲的に学習に取り組んでいる。
そのため、就職活動では、スキルや経験を面接でアピールするための場面を想定して実践的な経験を積み重ねていく。
インターンシップやアルバイトは、社会に出て勤務する仕事内容を前提として職場体験をする。
その体験を通じて、自分に合った職業かどうかを判断できるし、役立つ情報や経験を得ることができる。
もちろん、すべての学生がこのような意識を持っているわけではないが。全体的として、日本の学生と比べての職業意識の違いは歴然としている。

偏った職業観

日本の就活事情は欧米と異なる。あくまで学業優先となり、大学での表立った就活の開始時期は3年の春から会社説明会の解禁となる。それまでは欧米のような職業概念やインターンシップ、アルバイト等で自分の興味や関心を持った職業観は薄くとりあえず稼げるアルバイト探すことに。そのアルバイトが将来の仕事に結びつくことなど考えていない。またインターン制度が始まった当初からインターンはあくまでも職業体験ができる学びの場として学校も学生も捉えられており、長くて1週間、なかには1日体験というのが主流である。しかもインターン生は選考の対象としてはならないという不文律があり、インターンは形式ばった職業体験の場であった。しかし外資や一部の大企業の熱心な会社はそうとらえてはいない。インターンが実際の選考活動であり、自社のビジネスモデルを学生に理解してもらい、「これは」という学生に人事は目星を付け、なんとなく内定を匂わ説明会への参加を促している。近年の売り手市場に加え、グローバル企業との採用競争によりインターンが事実上有名無実化していることもあり、今年からインターン活動を選考対処として認める方向になった。つまり会社説明会前のインターンシップが事実上の草刈場となったのである。

就活の現状は

就活で毎年の学生の動き、特徴をまとめていくと次のようなものになる。
企業選びの選択肢
初任給、福利厚生、保険関係、興味のある業界の将来性、定着率、先輩の体験談、最初のインターン先、保護者の推奨という流れになっている。
TVCMで有名な会社、誰もが知っている会社の採用枠はおおよそ2万人程度。
就職活動は50万人程度の学生が参加すると言われているので人気企業への就職率は全体の3%程度。大企業、人気企業への就職率は3%。この数字は難関大学に入るよりも難しい。狭き門なのであることを理解することが必要である。
最近は求人難もあって初任給を高めに設定している企業がある。問題はその先3年、5年先の給料額はいくらになっているか調べているか。5年先。年収では初年度の受給額より下がっているかもしれない。ここもよーく注視しておく必要がある。TVCMで有名な会社、誰もが知っている会社にうちの子は入ってほしいと願い保護者は多い。今時、こういう保護者がいるのか?いるのである。

これからについて

このような背景から、情報感度の高い一部の学生は最初の会社をキャリア形成の場として捉え就活している。最初の3年でスキル・経験を身につけ本命の仕事、業界に狙いを定めているという。欧米のような職業意識が早期に芽生えていくには環境に家庭や、学校の意識が追いついていない。したがって子どもにもまだそういった意識はなく、とりあえず大学にはいって就活の時期になって、わずか半年の間に将来の職業を決めるというのは無理がある。そこに気付くが時すでに遅しという現実。そこで方向転換し社会に入っての3年間をキャリア形成の場と考えているのである。しかしこれらの動きは社会情勢を敏感に察知し自己の置かれている状況を理解している、まだまだ一部の学生である。今、分かっている事実はグローバルの中で日本という国が取り残されつつつあると言う事。これからの現象を一つ一つまとめて、その現実を受け止め、ココに気付いてどう行動していくかを考えていくことが大事である。